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#イベント報告 #カーボンニュートラル #太陽光発電

【開催報告】太陽光発電との向き合い方を考える -カーボンニュートラルと住宅建築-


2022年2月18日に、オンラインセミナー『“太陽光発電”との向き合い方を考える -カーボンニュートラルと住宅建築-』を開催しました。

建築家の堀部安嗣氏、過去に170棟以上の太陽光発電設置経験がある中祥建設WARAOYA STYLEの阪口英樹氏、Energy ZOO開発者である野池政宏の3名から、カーボンニュートラルに向かう現代社会において、私たち住宅建築に携わるものが何を目指し、どのように考え、具体的に何をしなければいけないのかをお話し頂きました。
今回はその内容をダイジェストでお伝えし、また参加者の皆様から寄せられたご質問にお答えしたいと思います。

【第1部】2050年カーボンニュートラルに向かう住宅の姿
住まいと環境社・暮らしエネルギー研究所 野池政宏

2050年のカーボンニュートラルを実現するには、家庭部門のみならず、
産業・運輸・業務を含めた国全体での取り組みが必要になりますが、
家庭以外の部門の削減に依存せず、
家庭部門単独でカーボンニュートラルを実現するという前提が示されました。

具体的な数値目標としては、現状46.5億GJとなっている家庭部門のエネルギー消費量を
省エネと創エネでまずは23.5億GJ(現状の半分程度)まで減らし、
その23.5億GJは発電所が自然エネルギーで発電することによって
カーボンニュートラルを実現するというものです。

そして、この数値目標を達成するような住宅の性能が示されました。

是非皆様にはこの
「新築BEI 0.65(創エネ除く)」
「省エネ改修を4倍に増やす」
「太陽光発電を設置する」
に取り組んで頂ければと思います。

【第2部】太陽光発電との向き合い方
堀部安嗣建築設計事務所 堀部安嗣氏

“太陽光発電”というと、設備の話、お金の話になりがちですし、
堀部さんがお話されるなら意匠的なことかな・・・と予想されていた方も多いかと思いますが、そもそも”幸せとはなにか””私達日本人が思い出さなくてはいけない豊かさとは何か”というところから、性能・パッシブデザイン・発電への取り組みまでお話しいただきました。

特に参加者のみなさんに好評だったのは「お尻パッシブ」です。
その詳細は参加された方だけが知ることのできた機密情報ということで^^

【第3部】太陽光発電の提案と施工
中祥建設 WARAOYA STYLE 阪口英樹氏

家庭部門全体の話、
住宅計画の話に続いて、
阪口さんにはさらに太陽光発電にフォーカスして、施工までのお話をして頂きました。

太陽光発電を提案・設置しようとするとき、いくつかハードルがあるのではないでしょうか。
「雨漏りをするんじゃないか」
「買取価格が下がっているから元を取れないんじゃないだろうか」等々・・・
阪口さんはこれまで175件の設置実績をもっていらっしゃっるので
そのノウハウを余す所なくお話しいただきました。

【第4部】トークセッション&質疑応答

第4部では参加者の皆さんからのご質問に3者がお答えする形でトークセッションを行いました。その際に寄せられたご質問と、事後アンケートへのご回答を併せてご紹介させて頂きます。

Q1 家庭、人単位で幸せを感じられる必要最小限のエネルギー(KWh)はどのくらいのものでしょうか。発電できる再生可能エネルギーを毎日もしくは毎月の各家庭若しくは各人への配給制にすれば、今あるエネルギーで賄う生活の工夫が生まれてくるような気がします。
A 参考として、阪口さんの建築されたお宅の実測では2~4人家族で5200kWh/世帯程度でした。このあたりを目安にして頂いても良いと思います。

Q2 10年償還で初期費用なしで太陽光を設置できるソラトモサービス(関西電力と太陽光メーカーの業務提携による)を、住まい手におすすめしています。初期費用不要で、将来の自家消費に備えることができるし、日中の湯沸かし、EV充電も含めた、全うな電化住宅の推進にも繋がると認識しています。こういったサービスは複数あるようですが、先生方の見解をお聞きしたいです。なお、このサービス活用の際、メーカーの隣地建物の影のシュミレーションはとても厳しく、安全側で影を長く見るので、設置不可とはじかれる場合もあります。例えば、堀部さんの京都の案件などは、季節と時間によって、隣地建物の影の影響が少なからずあるかと思いますが、設置の是非について、その辺りの判断基準があれば、そちらも教えてください。
A 国としてもこういった屋根貸し(PPAモデル)には期待しているようです。今回の登壇者は自社施工・提供を行っているので詳しくはありませんが、今後こういったサービスの情報を集めてみなさんと共有していきたいと思います。
また日影の影響については、影に強いパネルを採用するということはしますが、出力低下を恐れて木も植えないというのは寂しいなと・・・ある季節のある時間ぐらいだったら良しとしようと思っています。(屋根貸しサービスだとこういった判断は難しいかと思いますが)

Q3 エコキュートは、電気温水器よりはエコだと思いますが、原発の夜間電力を使わなければ 電気代も安くはならないと思いますがどうでしょうか
A 現在太陽光発電の買取価格が17円、中部電力の深夜電力料金が14円+再エネ賦課金3円で17円なので、深夜電力を使わずに日中のソーラーチャージで給湯を賄うという考えがあると思います。まずはエコキュートで消費量を抑え、日中ソーラーチャージでお湯を沸かせば、自家消費率の向上にも役立つと思います。

Q4 大変参考になるセミナーをありがとうございます。 
太陽光を設置した部分の屋根(太陽光と接する屋根面)のメンテナンスはどのようにされておりますでしょうか?メンテナンス周期やメンテナンス方法を確立されていればご指導ください。
A 3年おきに屋根に上がって水洗いをしています。よくあるのはパネルと屋根の間に鳥が巣を作っているというのがあります。

Q5 ソーラーパネル等を扱ってきたうえで感じたデメリットを、今後こういう点が改善されていくといいなと思っているところを教えてください。
A 発電効率が上がってパネルの設置面積が小さくなれば、設計の自由度が上がるので、高効率なシステムがどんどん開発されていくと良いなと思います。
メーカーには価格競争に陥るのではなく長期ビジョンを持って取り組んでほしいと思います。

Q6 蓄電池は太陽光発電とセットでご提案した方がいいのでしょうか?
A 蓄電池設置のご相談も受けるようになってきましたが、蓄電池の設置費用が170万円程度で、寿命が10年程度と言われているので、今のところは電気温水器だった方にエコキュートをおすすめするところに終止しています。ただエコキュートを設置したぐらいでは自家消費率が上がってこないので、やはり蓄電池も必要かなと思っています。最近蓄電池の設置も数台したので、そのあたりのデータも今後共有していきたいと思います。

Q7 10年前の物件に太陽光を設置する場合、防水層や気密層の処理が問題になると思うのですが、実際にはどうされていますか?
A 防水層を貫通するので心配はありますが、そういうところの心配を太陽光設置業者任せにしたくなくて自社施工をしています。施工方法はメーカー指示の方法で行っています。

自分のところでそのあたりの自信を持てたのは二重野地にしてからです。パネルを単純に載せるというところから、それを前提にすべての設計を行っていくというところに来ているのかと思います。

Q8 太陽光発電は、創エネとして必要なのかもしれませんが、廃棄コストを考えた場合は、結構エネルギーを要すると思うのですが、LCCで考えるとどうなのでしょうか
A LCEは3年で元が取れるという研究結果がでているので、それを懸念して設置しないという判断はしなくて良いと思います。

Q9 太陽光パネルを載せていた家で、「処分したい事情が生じ、その処分にとても苦慮した」という話を聞いたことがあります。パネルの解体やその処分、受け取り先の対応は業界として準備できているのでしょうか? また、空き家問題があるように、空き家にパネルが載っている場合、発電し続けるのでしょうか? ほったらかし状態で問題ないのでしょうか? 将来の子供達に負の遺産を残さないという意味では、太陽光を載せることの最終的な責任はあやふやな気がしております。
A 国もこういった問題には取り組んでいるし、野池の投影資料内にあるリンク先を見てもらえると実情がわかると思います。また将来的なメリットとデメリットを比較しても、太陽光発電を載せるという方がメリットが大きいし、デメリットは小さいと判断しています。

Q10 いろいろなメーカーから太陽光発電パネルが発売されていると思いますが、阪口様はどのメーカーのパネルを採用していますか?また、そのパネルを選んだ理由を教えていただければ嬉しいです。
A ・高効率で1枚あたりの容量が多いので、載せる枚数(面積)を減らせること・暑さに強い(夏でも効率が他社メーカーより落ちない)こと・一番の理由は、OB様がターゲットだったから、弊社会長担当のOB様の多くがご年配の方が多く、その方たちは性能うんぬんよりパナソニックがすきだから、パナソニックなら安心、家電や設備ならパナソニックって思ってる方が圧倒的に多かったからです。

Q11 阪口さんのデータで、UA値の数字がよいと思うのですが、気密測定などもされていますでしょうか?(およそのC値を教えて下さい)3種換気で床下エアコンが標準仕様なのでしょうか?
A ここ最近の物件は、大体 Q値1.6前後 C値0.4~0.7くらいが多く、床下エアコンは標準ではないですが、ほぼほぼ採用してます。 

Q12 約24kW設置され20kWは全量買い取り4kWは余剰買い取りでされておられましたが、1棟で全量システム余剰システムの2システムの申請はどうされたのでしょうか。
A このお宅で太陽光搭載したのが、6年前くらいになるので今現在可能かどうかは、調べてなので分かりませんが、余剰と全量を1棟のお宅で同時に載せることは可能でした。電力メーターは、もちろん別々になります。申請は、余剰と全量とそれぞれ行って下さい。

Q13 性能と省エネに気を配っていまして、創エネについても勧めてはいるのですが多雪地帯の寒冷地ではどのようにしたらいいでしょうか?
A 暖房期には発電は見込めないと思いますが、それ以外の期間では設置メリットがあると考えます。単純にイニシャルとランニングのコスト比較ではなく、レジリエンス性や環境性も付加してお客様にお伝えすると採用件数も増えるのではないでしょうか。

Q14 なぜ、なかなか自己消費率が上がらないのでしょうか?
A 発電する時間と消費する時間にギャップがあるからです。

今回は200名を上回る方にご参加頂き、太陽光発電の今後について関心の高さが伺えました。
今後もこのようなセミナーを企画していきますので、是非ご参加下さい!

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